なぜ仮説思考が重要なのか
2022/10/11
その他仮説思考とは何か
仮説思考とは、限られた情報の中から仮説を立て、検証、修正のサイクルを回すことによって、結論の質を上げていこうとする思考プロセスである。仮説検証のサイクルを小さく回し、仮説の精度を上げていくことで、短期間で効率的に結論に到達できる。
対して、一般に企業は、考えうるさまざまな局面から調査・分析を実施してから意思決定しようとする傾向がある。このように、できるだけ多くの情報を集めて完璧な結論を出そうとする思考プロセスを網羅思考と呼ぶ。
仮説思考では仮説を基に検証に必要なデータのみを集めるが、網羅思考ではありとあらゆるデータを集め、そこから絶対的な結論を導こうとする。
なぜ失敗するのか
変化の激しい現代社会で網羅思考でアプローチした場合、意思決定に時間がかかりすぎて施策の実施が遅れたり、次々と新しい情報が出てきていつまでも意思決定できない状態に陥りかねない。そうこうしているうちに、売上が下がり続けて、取り返しがつかなくなってしまうかもしれない。
より深刻な問題は、情報を集めすぎてデータに引っ張られてバイアスがかかったり、自分ならではの視点が失われて新しい知恵が出てこなくなることにある。ある程度までは情報を集めることで働く知恵の量が大きくなるかもしれないが、それを超えると働く知恵の量が減衰してしまう。
例えば、一流のベテラン科学者が、若いときのような革新的なアイデアが生み出せなくなることなどはよく知られている。
(「イシューからはじめよ」より抜粋)
なぜ仮説思考が必要なのか
前述の通り、仮説思考とは、限られた情報の中から仮説を立て、検証、修正のサイクルを回すことによって、問題解決に向けて進んでいく思考法である。
仮説思考には以下のようなメリットがある。
「本当に取り組むべき価値のある問題」かどうかを見極められる
仮説思考によって、「本当に取り組むべき価値のある問題」かどうかを見極められるようになる。
世の中で「問題かもしれない」と言われていることのうち、「本当に取り組むべき価値のある問題」はほんのわずかしかない。ほとんどの問題は、解いてもその後の意思決定に全く影響しないか大したインパクトのない問題か、あるいは複雑すぎてそもそも解くことのできない問題である。
具体的な仮説を立てることで、ストーリーが明確になり、次の意思決定に影響する「本当に取り組むべき価値のある問題」かどうかの見極められるようになる。
例えば「売上が下がっているのはなぜか」という問いに対して、「向かい側に競合店がオープンしたため客足が減った」という仮説を立てても、店を移設できないなら次の施策につながらない。一方で、「客足は減ったが、宅配の需要は増えている」という仮説を立てた場合、宅配に力を入れるなど次の施策につなげられる。この場合、後者が「本当に取り組むべき価値のある問題」ということになる。
必要な情報と分析するべきことが明確になる
仮説を立てない限り、解こうとしている問題に関係ありそうな情報を網羅的に集めるしかないが、一度具体的な仮説を立てると、本当に必要な情報と分析するべきことが明確になる。
例えば、「新しい会計基準について調べておいて」と言われた場合、どこまで調べればよいかわからず、無駄に詳細まで調べてしまうことになりかねないが、「新しい会計基準ではわが社の利益が大きく下がるのではないか」と言われた場合、どこまで調べればよいかがより明確になり、無駄な作業を大きく削減できる。
分析結果の解釈が明確になる
仮説を立てない限り、あらゆる角度から網羅的に分析することになり、分析結果には当たり前のことやアクションにつながらないものも多分に含まれる可能性が高い。
一方で、具体的な仮説を立てて何のための分析かを明確にすることで、「結論は出たけどそれって当たり前だよね。」とか「分析結果は出たけど結局何をすればいいんだっけ?」といった結末を防ぐことができる。
仮説思考では短期間で効率的に結論に到達できる
前述の通り、仮説思考は網羅思考と比較して、短期間で効率的に結論にたどり着くことができる。仮説が間違っていたとしても、気づいた時点で新しい仮説を立てれば良く、仮説検証のサイクルを回していくに連れて結論の質も向上していく。