PMBOK 第6版と第7版の違い
2022/10/11
その他PMBOKとは
PMBOKとは、米国のプロジェクトマネジメント協会(PMI)が提唱するプロジェクトマネジメントの知識体系である。ほぼ4年ごとに改定されていて、現在では世界標準として利用されている。
2021年にPMBOK 第7版が発行されたが、第6版から内容が大きく変わっていたため、業界で話題となった。
PMBOKの変遷
1969年に米国のプロジェクトマネジメント協会が設立後、1987年に最初のPMBOKが発行されて以来、何度も改定が行われ、2022年現在はPMBOKガイド第7版まで発行されている。
1969年 プロジェクトマネジメント協会設立
1987年 PMBOK 発刊
1996年 PMBOKガイド初版 発刊
2000年 PMBOKガイド第2版 発刊
2004年 PMBOKガイド第3版 発刊
2008年 PMBOKガイド第4版 発刊
2012年 PMBOKガイド第5版 発刊
2017年 PMBOKガイド第6版 発刊
2021年 PMBOKガイド第7版 発刊
PMBOK 第7版のページ数
PMBOK 第7版(英語版)のページ数は250ページで、第6版の756ページと比較してかなり薄くなっている。
PMBOK 第7版での改定内容
PMBOK 第6版と第7版で大きく変わった部分は以下の3点。
成果物中心から価値提供中心へ
第6版では、QCD(Q: 品質、C: 費用、D: 納期)の達成に重点が置かれていて、成果物中心的な考え方である。
一方、第7版では、価値提供に焦点が当てられている。顧客にとって価値のあるソフトウェアを素早く提供することを重視するアジャイルの考え方が取り込まれたと言って良いだろう。
5つのプロセス群から12の原則へ
PMBOK 第7版では、「5つのプロセス群」が廃止され、「12の原則」が導入された。
12の原則
10の知識エリアから8つのパフォーマンスドメインへ
PMBOK 第7版では、「10の知識エリア」が廃止され、「8つのパフォーマンスドメイン」が導入された。
8つのパフォーマンスドメイン
なぜ大幅に改定されたのか
公式のFAQsに改訂理由についての記載がある。
ざっくり日本語訳すると「テクノロジーの発展に伴い、プロジェクトマネジメントを含め多くの職業で働き方が大きく変わりました。世界中の様々な業種のプロジェクトマネージャーからのフィードバックに基づいて、現在の働き方に応じてPMBOKの構成と内容に改善の余地があり、現在のニーズに合わせてPMBOKをアップデートする必要があると判断しました。」とのこと。
第7版ではアジャイルの考え方が大きく取り込まれたとのうわさだが、公式のFAQsにアジャイルについての記載もあったので見てみよう。
ざっくり日本語訳すると「PMBOK 第7版は開発アプローチ(ウォーターフォールやアジャイル)に関わらず価値を提供することに焦点を当てています。PMBOK 第7版には12の原則があるけど、アジャイルの原則とは別物です。むしろ、開発アプローチに関わらず普遍的なものです。」とのこと。
歴史の長いPMBOKに、現在主流のアジャイルの考え方を包括した形で取り込むには、構成からガラリと変える必要があったと推測される。
第6版の学習は無駄になる?
こちらも公式のFAQsに記載があるので見てみよう。
ざっくり日本語訳すると「PMBOK 第6版は引き続き有効ですが、プロジェクトマネジメント基準は更新されました。何も考えずに第6版のプロセス群を適用するのではなく、第7版の12の原則に基づいてもっと良い別のアプローチがないか考えましょう。」とのこと。
PMBOK 第6版はプロジェクトマネジメントの原則を達成するためのプラクティスとして部分的に有効ではあるが、ただ適用すれば良いというものではないということを示唆されている。第7版では、変化の激しい現代社会の中で、どのようにプロジェクトと向き合えばよいのか一歩引いた視点から教えてくれているようだ。
なお、PMBOK 第6版のプラクティスは「PMI Standards+」からデジタルコンテンツとして利用できる。